小野寺伝助『クソみたいな世界で生き抜くためのパンク的読書』、『クソみたいな世界で抗うためのパンク的読書』(地下BOOKS)

神奈川県内の出版社、書店が集うイベント「本は港」で入手した本。「パンク的読書」という言葉が気になった。

「パンクとは、突き詰めて、突き抜けること」だという。なぜか。「パンクという価値観、パンクスという存在感が社会の中ではマイノリティであり劣等感を抱く孤独な個」だからだ。
「パンクスの原動力は端的に言うとマジョリティに対する劣等感であり、怒り」であり、パンクとは「少数派である集団や個としての生き方であり、考え方」だ。

著者はそうしたパンク的精神を核に、「パンク的書物」を読み書評する。最初は、さぞかしぶっとんだ、メインストリームからちょっと外れたような癖のある本を選ぶのかと思ったのだが、ページをめくるとなんてことはない。エッセイや人文社会系の、どこかで見たことのあるような本である。『夜と霧』のような名著もある。

反戦、脱資本主義、アナキズム、フェミニズム…マジョリティがマジョリティのために作った社会や経済のしくみに対抗する思想や運動、それって全部パンクだった。日々、政治や身の回りの不条理に対する鬱憤やモヤモヤ、それってまさに「マジョリティに対する劣等感や怒り」だ。

続編の『抗うための〜』では、「ユニティ(Unity)」が大きなキーワードとなっている。じゃあ何か組織して活動しなきゃいけないのかというと、そうではなく、必要なのは他者への理解だ。

このままじゃダメだ、抗うやつはこんなにもいる。そんな叫びを聞いた気がした。「パンク」という視座を手に入れた私は、少し強くなれたかもしれない。


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