今読んでいる原書(2024年2月)

日々、持ち込みたいな、持ち込みできるかなと考えながら原書を読んでいる。これは! と思う原書にあたっても、出版社が出したいと思えるような内容なのか確信が持てなかったり、単純にシノプシスを書く時間が取れなかったりで、シノプシスを書かずじまい、出さずじまいの原書がいくつかある。ここでは、それでもちょっと私が興味を持った原書を紹介していく。
(そしてあわよくば、出版社の目に留まりお声がかかることを淡く期待している。)

まず、今注目しているアワードでArab American Book Awardがある。Arab American National Museumが毎年開催しているもので、前年に出版されたフィクション、ノンフィクションをノミネート、表彰している。その中から、2023年のアワードで気になったものを2冊。

Edward E. Curtis IV “Muslims of the Heartland: How Syrian Immigrants Made a Home in the American Midwest” (NYU Press)
アメリカ中西部に移住したシリア系アラブ移民の、1910年代から第2次世界大戦までの歴史をたどるノンフィクション。アメリカ大陸には白人がネイティブアメリカンの土地を入植し、そこに黒人奴隷が連れられて今のアメリカを建国した――だけでなく、アメリカ建国の陰にはアラブ系移民の活躍があった。彼らは今から100年以上前から中西部で自らのコミュニティを形成し、脈々と文化を継承してきた。それにもかかわらず、大戦で命を落としたアラブ人の墓には英語名が刻まれ、十字架がかけられ、誰もそこにアラブ人ムスリムがいたとは気づいていない。アラブ系移民にまつわるアメリカ史をよく知らない私は、本を読むにつれ歴史認識を改められる。

Noor Naga “If an Egyptian Cannot Speak English”(Graywolf Press)
エジプト人女性作家ということで気になった本。エジプト系アメリカ人女性と、貧困の町出身のエジプト人男性がカイロのカフェで出会い、恋に落ち、女性の家でふたりは暮らし始める。そしてすぐに、ふたりはお互いにもう一方の人生が歩めたら、と思うようになり、暴力へと発展する。

あと、2022年のアワードでは、次の本が気になってぽちったのだけど、まだアマゾンから届いていない(ので、まだ読んでいない。再注文するか……)。

Mansoor Adayfi “Don’t Forget Us Here: Lost and Found at Guantanamo”(Hachette Books)
9.11後に誘拐されグアンタナモ基地に送られた著者が、そこでの14年間を綴る。

2024年のアワードは秋に発表されるようなので、それまで楽しみに待ちたい。

次に、エジプトの革命と女性についての本2冊。

Manal Hamzeh “Women Resisting Sexual Violence and the Egyptian Revolution: Arab Feminist Testimonies” (I.B. Tauris)
これは今シノプシスを書いていて、早めに仕上げて持ち込みたいと考えている。出版は2020年で少し古いのが気になってはいる。エジプト革命(いわゆるアラブの春)で性暴力にあった3人の女性の証言をもとに、国家、革命という政治活動におけるジェンダー構造を再定義する。著者が西欧のオリエンタリズムにしばられたフェミニズムではなく一貫して当事者の目線から分析しようとしていて、英語で書くことの制限を理解しながら、それでもアラビア語を多用して「エジプト女性の」眼差しから革命を分析する。

Rita Stephan and Mounira M. Charrad (ed.) “Women Rising” (NYU Press)
上の本と一緒に購入。こちらは論考集となっているのでよりアカデミック。翻訳出版するなら、上のHamzehの作品かなあ。


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